色をつける。

Motoko Kamata

2019年3月30日 ·

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いつもモノクロだった

この風景に色をつけたくて

見に行った。


確かに、色はついていて

変わらない姿と庭があり

ああ、そうだったよねって思ったのだけど

何か情感は浮かばない。。


ふと置いてあった写真集を見る。

最後のほうに

この写真集が出版されるにあたって、の文章を見つけて

なんとなく読み始めると

栲象さんが庭のパフォーマンスをし始める時に

自分が作ったチラシの話から言葉がはじまっていた。


チラシの紙の質感、そこにある言葉。。。

自分がなにもわからないまま、栲象さんの家に行き

見てはいけないものを、見ているような

盗撮をしているような気持ちで

「行為(Action)」を撮影し、

こたつと猫とワインで歓待してもらった情景が、

目の前にあるカラーの写真よりもはっきりと浮かんできた。


初めて会う人懐っこい栲象さんと

その行為のギャップに

どうしていいのかわからなくて

ドギマギしていた。


なんだか、いまでもあの空間の感触が自分の中に蘇ってくる感じがする。


栲象さんの行為自体、そして家の様子などを含め

たっくさんの写真を撮ったのだけれど

チラシには使ったのは

縁側に置いてあった

照明に使っているであろうブリキのスタンドの写真。


なんでその写真にしたのか

行為をしている写真ではなかったのか

(単にいい写真がなかったのかもしれないけど)

はっきりと覚えてはいないけれど

もらった言葉やコンセプトにおいて

それが一番ふさわしいのだ、と思ったんだと思う。


あえて、ガサガサしたわら半紙のような紙に印刷したチラシは、なぜか自分の手元には1枚も残っておらず(そんなにたくさん印刷しなかったのもある)

それなのに、それを大事に持っている人から

文章であの質感を伝えられ、

そこから自分の感覚が蘇ってくるとは

何かとても不思議な体験をした。


「鎌田さん、栲さんの写真とチラシをお願いしたいの」

という美香さんの甲高い声までも蘇って。


撮るということ=生きていること、だったときに

世界はもっと混沌として秩序なく目の前にとんでもないことが現れ続けていた。。。

その中の一つとして。


『宮本隆司:首くくり栲象』出版記念展覧会

at Bank ART SILK

2019年3月18日[月]~3月31日[日] 11:00~19:00